Aqoursの紙飛行機

  

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「青い鳥が、あの虹をこえて飛べたんだから」

 

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「私たちにだって、きっとできるよ」

 

劇場版「ラブライブ!サンシャイン!!」の終盤。

千歌が投げた紙飛行機は、高く高く飛んでいきます。

 

今回は、その紙飛行機と一緒に「ラブライブ!サンシャイン!!」の物語を改めて振り返ってみたいと思います。

 

 

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「もう少し飛ぶと思ったんだけどな・・・」
 
千歌が子供のころ飛ばせなかった紙飛行機は、

 

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どうしてあんなに高く飛んだの?
あのときの千歌に何が起こったの?
その紙飛行機は、どこまで飛ぶの?

 

 

 


 

 

■『夢を飛ぶ紙飛行機』

 

 まず一番はじめに紙飛行機が登場したのは、テレビシリーズ2期1話『ネクストステップ』の冒頭です。

 

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「輝きって、一体どこから来るんだろう?」

MIRAI TICKET」の衣装の千歌が紙飛行機を追いかける途中で地面が割れて落ちてしまう、という「夢の中」のシーン。

 

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 このように「ラブライブ!サンシャイン!!」2期の物語は「夢を飛ぶ紙飛行機」と一緒にスタートしますが、あまり良い印象は受けません。

 千歌が「MIRAI TICKET」の衣装を着たまま落ちる、ということからAqoursは1期ラストで予選敗退したっぽい」ということが分かりますからね。

 

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「あとちょっと、もうちょっと」

 それは千歌のセリフからも何となく分かります。

 

 夢の中の「衣装」や「セリフ」、「落ちる」ことの意味はこんな感じだと思いますが「紙飛行機」はよく分かりません。いきなり出てきましたからね。

 

2-13「私たちの輝き」

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「紙飛行機のときだってそう」

 これは「2期13話の千歌ママのセリフ」と「劇場版冒頭のシーン」で後から分かるのですが、千歌にとって「紙飛行機」は「幼いころに飛ばそうとしていたもの」「でも飛ばせなかったもの」なんです。

 

 このことから、とりあえず今回は「紙飛行機」について下の図のように考えていきます。

 

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 紙飛行機を 「投げる」が「挑戦」、「飛ぶ」が「成功」、「落ちる」が「失敗」に対応していて、「千歌の心理が映像に変換されている」というイメージです。

 

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※紙飛行機に関してはとにかく説明が少なく、「とりあえず仮にこう考えてみる」という感じにはなってしまいますが、逆に「説明が少ない」ということはつまり「シンプルに読めばそれで良い」のかな、と思って「映像描写がそのまま心理描写になってる」という単純な読みをしています。特にサンシャインでは「心理」が「天気」に表れたりしますからね。

 

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「本当は悔しいのに誤魔化して、諦めたふりをしてた」

 また、千歌ママのセリフから「千歌は幼い頃に紙飛行機を飛ばせなかった」ということも分かるので、千歌にとって「紙飛行機」は「失敗のイメージが強いっぽい」ということも同時に見えてきます。

 

 それがたぶん千歌の「普通怪獣」という言葉につながっているのかな、とも思います。自分には「特別なこと(=紙飛行機を飛ばすこと)はできない」とずっと思っているから。

 

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 これらの「紙飛行機」の意味を踏まえると、2期1話冒頭のシーンはラブライブ予選で負けたこと」「幼いころに紙飛行機を飛ばせなかったこと」「2つの挑戦」のイメージが重なって千歌の夢に出てきた、というふうに見ることができるんです。

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「もしあのときラブライブの予選に勝って本大会に出場できてたら、未来は変わってたのかな」

 2期1話では千歌が「予選敗退を悔しく思っていること」「次の一歩を踏み出せないこと」が強調されていて、この千歌の「次の一歩を踏み出すかどうか揺れる気持ち」がタイトルのネクストステップ』に込められているんですね。

 

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「みんなで折ったからって。応援してるって持ってきてくれたの」

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 そんなとき、クラスメイトから贈られた千羽鶴を見て、千歌は「学校のみんなの気持ち」を知ります。

 

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「紙飛行機」と「千羽鶴」、なんとなく似てますよね。

 

 そして千歌は、もう一度「紙飛行機が飛ぶ夢」を見るのです。

 

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 今度は地面が割れることなく、夢の中の千歌は「何かに気付いたような顔」をします。

 

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 次の日の朝、目覚めた千歌はそのまま一気に学校まで走り、幼いころ紙飛行機を飛ばせなかった「普通怪獣」は「何か大きなものに立ち向かう」ように、校庭の空に向かって大きく叫びます。

 

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「ガオーー!!」

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 そして2期1話のラストでは、もう一度「紙飛行機」が投げられるのです。

 

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「最後まで頑張りたい。あがきたい」

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「起こしてみせる、奇跡を絶対に」「それまで泣かない、泣くもんか」

失敗しても、何度でも。

学校のみんなに背中を押され、Aqoursは『ネクストステップ』を踏み出します。

 

 つまり2期1話は、序盤で「何が失敗だったのか」「千歌にとって紙飛行機とは何なのか」を描いたうえで、2期の物語は「千歌がもう一度紙飛行機を投げる物語」になっていくんだということを示しているのです。

 

勇気はどこに?君の胸に!

 

何度だって追いかけようよ負けないで

失敗なんて誰でもあるよ

夢は消えない 夢は消えない

 

 

 

■ 屋上を飛ぶ紙飛行機

 

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 こうして「紙飛行機」と一緒に進んでいく物語ですが、その「紙飛行機」は2期の最終話で再び登場します。

 しかしそのシーンの導入はポジティブではありませんでした。

 

 2期13話『私たちの輝き』のBパート。千歌は1期の物語を「失敗」と感じていたように、2期の物語も「失敗」だと思っていることが分かります。

 それはたぶん、廃校を阻止できなかったから。

 

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 たしかに、2期はラブライブの大会では優勝しました。でも最終話の千歌はどことなく悲しそうです。

 

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「あそこにあったんだよね?」

 千歌は、「輝きはあそこ(=ラブライブ決勝)にあったんだよね?」と聞いています。

 自分では「あった」とは確信できていないから、「あったんだよね?」と人に聞いているんです。

  

2-1「ネクストステップ」

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 2期1話で投げた「あの紙飛行機」が飛んだのかどうか、千歌は確信できていないのです。

 

 だからそれを「確かめる」ために、2期1話で投げた紙飛行機の「答え合わせ」をするために、もう一度紙飛行機を投げるんですね。

 

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「何度でも飛ばせばいいのよ、千歌ちゃん!」

 失敗しても、何度でも。

 今度は母と姉たちに背中を押され、千歌は「最後の紙飛行機」を飛ばします。

 

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「飛べーー!」

 叫ぶような祈るような千歌の声に乗り、大きく飛び上がった紙飛行機はそのまま今までにないくらい長く飛び続け、ついに千歌たちの学校まで届きます。

 

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 しかし、学校の屋上に落ちた紙飛行機を見つけた千歌は、なぜか泣き出してしまいます。

 

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「私は嘘つきだ」「泣かないって決めたよね、千歌」

 家から学校の屋上まで届いたなら十分「飛んだ」と言えると思いますが、2期1話で「奇跡を起こすまで泣かない」と決めたのに泣いてしまった自分を「嘘つきだ」と言うのです。

 

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「起こしてみせる、奇跡を絶対に」「それまで泣かない、泣くもんか」

「まだ奇跡を起こしてないのに泣いてしまった」「あのときの約束を破ってしまった」、だから「約束を守れなかった自分は嘘つきだ」と言っているんです。

 

 ということは、ここの千歌は「まだ奇跡は起こってないと思っている」わけで、その心理が映像に変換された結果として「紙飛行機」は落ちてしまうのです。

 

 最終話になっても、ラブライブで優勝しても、千歌は「紙飛行機」を飛ばすことができません。

 

2-13「私たちの輝き」

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「それが輝きだったんだ。」

 といっても、2期13話の中で起こった順番としては ①紙飛行機が落ちる②千歌が体育館に行く③「私たちの輝き」に気付く という流れなので矛盾はありません。屋上のシーンのときの千歌は「輝きに届かなかった」と思っていたけど、本当は届いていたということです。

 

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「どうして涙が出てくるの?」

 千歌は「まだそのことに気付いてないだけ」なんです。

 

 このあたりの「千歌の気持ちの変化」を強調するために敢えて紙飛行機を落としたのかもしれませんが、それでも2期の中の「紙飛行機の描かれ方」を考えると何か釈然としませんよね。あんなに丁寧に描かれていた「紙飛行機」がまるで「捨て石」のような扱いで「落ちたまま幕が下りる」「最後まで飛ばなかった」というのは、少し消化不良な感じがします。

 

 演出的にも「紙飛行機を高く飛ばして『WONDERFUL STORIES』がはじまる」みたいにしたほうが簡単で自然で分かりやすいのに、なぜわざわざ「難しい演出」を選んだのでしょうか?

 

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 そんなテレビシリーズで残された「紙飛行機の謎」は、劇場版の中で「大きなテーマ」となってしっかりと描かれることになります。

 

 


 

 

■『想い出を飛ぶ紙飛行機』

 

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「もう少し飛ぶと思ったんだけどな・・・」

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 テレビシリーズから1年。

ラブライブ!サンシャイン!!」の劇場版は、幼い千歌が「紙飛行機」を投げるシーンからはじまります。

 

 幼い千歌は紙飛行機を飛ばすことができず、一緒にいる曜が千歌を励ましています。そして、そんな二人に梨子が声をかけていますね。

 

劇場版「ラブライブ!The School Idol Movie

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「冒頭に回想シーンがあること」「そこに登場する3人の子供たちの関係性」を考えると、なんだか「劇場版ラブライブ!」との対比を感じます。「幼い穂乃果は水たまりを跳べた」のに対して「幼い千歌は紙飛行機を飛ばせない」というのも、それぞれの作品の色が出てますよね。

 ※もちろん劇場版で海外に行くという時点で意識的な対比はありますし、この冒頭の回想シーンが終盤で再登場するという流れも全く同じです。

 

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 そして「もう一つの対比」として、「冒頭が紙飛行機のシーン」ということと「そのときに流れる劇伴の曲名」に注目すれば、テレビシリーズ2期1話との対比も少なからず感じます。

 

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 つまり、千歌たちの物語の中の「紙飛行機の役割」はまだ終わっていないこと、2期で出来なかったことをもう一度、劇場版もテレビシリーズ2期と同じように「千歌がもう一度紙飛行機を投げる物語」になっていくんだということが、この冒頭のシーンから見えてくるわけです。

 

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 そしてそれは、オープニングの『僕らの走ってきた道は…』で紙飛行機が飛ばされることからも分かります。

 

 まるで2期13話でやったような「答え合わせ」をもう一度、「僕らの走ってきた道は…どんな道だったんだろう?」と言いながら、少し不安そうに紙飛行機を投げる千歌たちの姿が目に浮かびます。

 

 


 

■ 成功の「形」

 

 さて、ここから本格的に劇場版の中身に入っていきますが、まずは「劇場版の大きなテーマ」についてです。

 

 アニメ2期と同じように「紙飛行機」からはじまり進んでいく劇場版。

 その途中に「千歌が2期最終話で紙飛行機を飛ばせなかった理由」が見えるシーンがあります。

 

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 イタリアで鞠莉と鞠莉ママが対峙するシーン。鞠莉ママが「スクールアイドルをやった結果として何を得たのか?」「何ひとつ良いことはなかった」と言うシーンがありますが、千歌たちは悲しそうな表情で、その言葉を否定できずにいました。

 

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「何ひとつ良いことは無かったではないですか」「学校は廃校になり、鞠莉は海外での卒業の資格をもらえなかったのですよ」

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 ここの千歌は「私たちって結局なにを成し遂げたんだろう?」と思ってそうな表情で、この鞠莉ママのセリフは2期13話のあのときの千歌の気持ちを的確に表しているように思えます。

 

2-13「私たちの輝き」

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「あそこにあったんだよね?」

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「どうして涙が出てくるの?」

 つまり千歌にはまだ「自分たちは具体的に何に成功したのか」という「成功の形」はっきりとは見えていない、というようなことが何となく分かります。

 

 でもそれはそうですよね。千歌の言う「輝き」のような「形の無いもの」を言葉で説明するのはとても難しく、ここで鞠莉ママに対して「千歌たちが手に入れたもの」を具体的に説明できる人は視聴者の中にも少ないと思います。

 

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「くだらない!」

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「くだらない・・・?」

 しかしそれでも、「スクールアイドルなんてくだらない」と言われたときには表情が変わり、「自分たちがやってきたことは決してくだらないものではなかった」ということだけははっきりと分かっているように見えます。

 

「具体的な成功の形」は見えていなくても「きっと何かを成し遂げたはず」という「ぼんやりとした実感」だけはある、という感じでしょうか?

 

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 だから、まだ「成功の形」が見えていなかったから、あのときの「2期13話の紙飛行機」は屋上に落ちてしまったのでしょうか?

 

 特に千歌には「子供の頃の紙飛行機」もありますからね。

 どうしても振り払えない「失敗の記憶」が残っている千歌には、「成功の形」をつかむのが人並み以上に難しいのかもしれません。

 

 そんな「目に見えない成功の形」「千歌たちは具体的に何を手に入れたのか」を見つけることが「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」の中の「大きなテーマのひとつ」になっていて、その「答え」は、この先の劇場版の中でひとつずつ丁寧に描かれていくことになります。

 

 

 

■3年生が手に入れたもの

 

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 先ほどのイタリアでの鞠莉ママのシーン。

 そこで早速その「答え」のひとつを、「3年生の3人が手に入れたもの」を見ることができます。

 

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「くだらない!」

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「くだらなくなんかない!」

「スクールアイドルはくだらない」と言う鞠莉ママに対してすぐに「そんなことはない」と反論する鞠莉。

 

 この一連のシーン、1期9話 「未熟DREAMER」の時と似てると思いませんでしたか?どちらも「鞠莉の将来とスクールアイドル」が中心になっていますからね。

 

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未熟DREAMER」のときの「果南の役割」は劇場版では鞠莉ママが担っていて、どちらも「鞠莉のことが大切」だけど「鞠莉の本心をつかめていない」というキャラクターになっています。

 

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「離ればなれになってもさ、私は鞠莉のこと忘れないから」

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 ふたりの「違い」は、果南は「鞠莉を自分から遠ざけようとする」のに対して、鞠莉ママは「鞠莉を自分の近くに置こうとする」という点です。

 

「大切だから遠ざける」と「大切だから近づける」。

 

 やり方は違っても、ふたりとも鞠莉のことが大切で、鞠莉のことを守ろうとしていることが分かりますよね。

 そしてふたりとも不器用で、「鞠莉の本当の気持ち」を分かっていません。

 

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 果南はコーヒーカップを強く置き、「昔の自分」と近い考えを持ってしまっている鞠莉ママにイライラしています。

 

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「鞠莉の自由を奪いたいから」

 似た者同士だから考えが分かってしまうのでしょうか。ここの果南は「未熟DREAMER」のときの「昔の自分」に対して怒っているようにも見えます。

 

 そんな鞠莉ママに鞠莉が連れていかれそうになったとき、果南もダイヤも迷わずに鞠莉の手をつかみ返します。

 

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 ふたりとも、鞠莉の手を離してしまった「あのとき」から大きく大きく成長しているのが分かりますよね。

 

1-9「未熟DREAMER

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 だって「こんなときどうしたらいいか」はもう「知ってる」から。

 

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 傷つきながら、転びながら、3人で見つけた「答え」はもう胸の中にあるから。

 

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「果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずない」

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 「本当の気持ち」を「言葉」にして伝えることができれば、それはちゃんと伝わるんだということをもう知ってるから。

 

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「ママの前で、スクールアイドルが人を感動させることができるって証明できたら、私の今までを認めてくれる?」

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「ママやパパが私を育ててくれたように、Aqoursやみんなが私を育てたの」「何ひとつ、手放すことなんてできない」

 だから鞠莉は、母親に「本当の気持ちを隠さず伝える」んですね。

 あのとき、果南に話したのと同じように。

 

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 ちゃんと、"ぜんぶ残ってる"。

 

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「気持ちはずっと、ここにあるよ」

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 あのときの3年生が手に入れた「答え」が、3人の手の中に残ったもの」が、「目に見える形」になって千歌たちの前に姿を現すのです。

 

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「いいでしょう」

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 劇場版で鞠莉が母親に本心を話すシーンは2つありますが、鞠莉ママはどちらのシーンもそれを聞いたら何故かあっさりと引き下がっています。

 ここに違和感を持った人もいるかもしれませんが、鞠莉ママは最初から「鞠莉の本心を本人から聞くこと」が目的だったのかもしれません。

 

 

 この「鞠莉と鞠莉ママのシーン」が「未熟DREAMER」の状況と似ているように、「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」は、「テレビシリーズと似た状況」が「再現」され、キャラクターたちがそれを「スピード解決」していくというような構造になっているのです。

 

 

 テレビシリーズをなぞるように、「その道の途中にあったもの」を確かめていくように、物語は「紙飛行機」と一緒に進んでいきます。

 

 

 

Saint Snowが手に入れたもの

 

 劇場版の「Saint Snowの物語」はSaint SnowAqoursの力を借りて問題を解決する」という流れになっていて、これも2期9話「Awaken the power」とよく似ていますよね。

 

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「そんなの、人に聞いたって分かるわけないじゃない!」「全部自分でやらなきゃ!」

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「姉さまたちはもう、いないの!」

 姉のいない「新しいグループ」をはじめようとする鹿角理亞。しかしAqoursは6人いるのに対して、理亞はたったひとりです。

 

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 聖良からアドバイスをもらう千歌たちと、それを複雑そうな表情で見つめる理亞。それはたぶん、理亞は聖良にアドバイスをもらうことができないから。

 

2-9「Awaken the power」

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「だから、新しいグループで違う『雪の結晶』を見つけて」「姉さまにもみんなにも喜んでもらえるようなスクールアイドルグループをつくる」「見てて」

 だって理亞は「ひとりでもできるところを姉に見てもらいたいから」「姉を喜ばせたいから」という決意で「新しい一歩」を踏み出しましたからね。理亞にとっては「姉の助けを借りずにひとりでやる」ことは何よりも重要なんです。それはもちろん、大好きな姉のために。

 

 姉のためならどこまでも自分に厳しくできる理亞の「強さと一途さ」、そして「脆さ」はテレビシリーズから変わっていません。

 

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「昔、姉さまと雪の日に一緒に探したの」

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「ふたりでスクールアイドルになるって決めた、あの瞬間から」「雪の結晶を、Saint Snowのシンボルにしようって」

 そんな今の理亞が生まれたのは、幼い日の「あの瞬間」だったのかもしれません。理亞の「冷たくて固い決意」は、「雪の結晶」というシンボルに表れているようにも思えます。

 

 だから理亞は、「姉からアドバイスをもらえる千歌たち」「千歌たちにアドバイスをしてあげる聖良」 「それを羨ましいと思ってしまう自分」に対して「悔しさ」「怒り」「悲しさ」のようなものを感じてしまい、でもそれは「自分で決めたルール」なので感情を吐き出す場所もないような状態なんです。

 

 

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 布団やカーテンにくるまり、ひとりで「殻」にこもる理亞。小さな身体の中にあるたくさんの感情を、ひとりで何とかしようとしています。

 

 

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「ダメだよ!」「理亞ちゃん、そんなこと絶対に望んでないと思う」

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「お姉ちゃんと続けたSaint Snowを大切にしたいから、新しいグループ始めるんだよ」「それって、Aqoursに入るってことじゃないと思う」

 そんな理亞の気持ちに、誰よりも早く気付いたのはルビィでした。その「いっぱいの光」でSaint Snowを照らした、あのときと同じように。

 

2-9「Awaken the power」

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「じゃあ、最後にしなければ良いんじゃないかな」

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「歌いませんか?」「一緒に曲を、お姉ちゃんに贈る曲を作って」「この光の中で、もう一度!」

 あのとき勇気を出して手を差し伸べた、その経験があるから、 今のルビィにはもう迷いが無いように見えます。

 

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「理亞ちゃんが叶えたくて、どうしても叶えられなかった夢を!」

 ルビィの提案でAqoursSaint Snowは、自分たちだけの「夢の決勝戦を行います。ふたりの「夢」を叶えるために。

 

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「今のこの瞬間は、決して消えません」

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Saint Snowは、私と理亞のこの思いは、ずっと残っていく」「どんなに変わっても、それは変わらず残っている」

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「だから、追いかける必要なんてない」

 

 

『追いかける必要なんてない。』

 

 

1-12「はばたきのとき」

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「μ'sみたいに輝くってことは、μ'sの背中を追いかけることじゃない」

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「自由に走るってことなんじゃないかな」

 

「夢の決勝戦」で聖良が理亞に渡した「答え」は、1期12話「はばたきのとき」で千歌たちが見つけた「答え」と同じものでした。

 

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「それでいいんだよって」 

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「それが、伝えたかったこと」

 

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 μ'sもAqoursも、聖良のことも、追いかける必要なんてない。

 何にもとらわれずに。自由に、まっすぐに。

 

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 あのときμ'sからAqoursに渡った「バトン」がいま、理亞の手に渡ります。

 

 鹿角理亞の「はばたきのとき」。

 

 劇場版の「Saint Snowの物語」は、2期9話「Awaken the power」と同じ状況からスタートしますが、最後は1期12話「はばたきのとき」と同じ場所に向かうのです。

 

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 そんなSaint Snowの姿を通して、Aqoursの9人も「羽根の形」をはっきりと目にします。まるで1期12話のあのとき、みんなで出した「答え」をもう一度確認するように。

 

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 全部、「ここ」に残ってる。

 

「あのとき理亞に手を差し伸べたルビィの勇気」も、「Saint Snowとして活動した理亞の気持ち」も、「あのとき見えたμ'sの羽根」も。

 

 ずっとそばにいる。ずっと一緒に歩いていく。

 何ひとつ、消えたりしないんだよ。

 

 

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「分かった。私たちの新しいAqoursが」

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「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」では「0にはならない」 「決して消えたりしない」という言葉が何度も出てきますが、その「理由」は言葉では語られません。

 

「なんで0にはならないの?」「なんで消えないの?」と思った人もいるかもしれませんが、劇場版そのものが「0にならないことの"確認作業"」「僕らの走ってきた道の"確認作業"」になっているんです。

 

 それは今回の未熟DREAMER」「Awaken the power」「はばたきのとき」の3つだけでも十分に分かると思います。

 

 

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「私は嘘つきだ」「泣かないって決めたよね、千歌」

 2期最終話で「成功の形」が見えなくて紙飛行機を飛ばせなかった千歌。

 そんな千歌が、劇場版の中で少しずつ「成功の形」を拾い集め、そしてついに「紙飛行機」を投げる「最後の時」がやってきます。

 

 

 

■ 『Everything is here』

 

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「なんでここにきたの?」「さあ?呼ばれたのかな、学校に」

 6人の新生Aqoursとしてのはじめてのライブをする前に、9人で最後に学校に来た千歌たち。

 

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「大丈夫、なくならないよ」

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「海も砂浜もバス停も」

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「太陽も船も空も山も街も」

 

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Aqoursも」

 

 あのとき、鞠莉ママの言葉に悲しそうな顔をしていた千歌とはもう全く違います。だって劇場版の中で「Aqoursが手に入れたもの」をたくさん見てきましたからね。

 

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「全部、全部、全部ここにある。ここに残っている」「ゼロには、絶対ならないんだよ」「私たちの中に残って、ずっとそばにいる。ずっと一緒に歩いていく」「ぜんぶ、私たちの一部なんだよ」

 

 そして千歌たちは9人で学校から走り出します。

 まるで、9人で走ってきた今までの道を振り返るように。

 

 

 

いつもはじまりはゼロだった
はじまって、一歩一歩前に進んで、積み上げて
でも、気付くとゼロに戻っていて
 

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それでも、ひとつひとつ積み上げてきた
なんとかなるって、きっとなんとかなるって信じて

 

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それでも、現実はきびしくて
一番叶えたい願いは、叶えられず
また、ゼロに戻ったような気もしたけれど

 

 

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私たちの中には色んな宝物が生まれていて

 

 

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それは、絶対消えないものだから

 

 

 

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 千歌が子供のころ飛ばせなかった紙飛行機は、

 

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 高く高く飛び上がります。

 

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 今は千歌だけじゃない、9つのAqoursの紙飛行機」が、空の向こうまで羽ばたいていくのです。

 

 

 

 


 

 

■ 『そして明日へ』

 

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「・・・はやくはやく!」「ちょっと待って!」

 

 

 静岡県沼津市、内浦の浜辺。

 

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「てか、なんでここ来たの?」「聖地だよ、せ・い・ち!」

 

 

「聖地」にやってきた少女が二人。

 

 ひとりはスクールアイドルに憧れる少女。

 もうひとりは、手を引っ張られて呆れながらも付いてきたような少女。

 

 

 まだ「0」の少女たち。

 それでも楽しそうに笑いあう二人のいる砂浜に、

 

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「0の紙飛行機」がふわりと落ちてきます。

 

「落ちた」というよりは、ふわふわと「意志を持って降りた」ように見えます。

まるで「この紙飛行機を飛ばしてみて?」と誰かが言っているようです。

 

 この場所から、この「0」から、新しい物語がはじまりそうな、そんな予感がしますよね。

 

 彼女たちの飛ばす紙飛行機はどんなふうに、どうやって、どこまで飛んでいくのでしょうか。楽しみですね。

 

 

 

 

 それと同時に、その紙飛行機はなんだか「とても長い旅」を終えて「やっとこの海に帰ってきた」という感じにも見えます。

 

 砂の上にゆっくりと腰を下ろして、まるで「ちょっとだけ休ませてね」と言っているみたいです。

 

 すぐそばの、砂で描かれた大きな文字に寄り添うように。

 

 

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「それで、なんていう名前なの?」「うん、名前はね」

 

 

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「"Aqours"――」

 

 

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「サンシャイン―――!」
 
 
 
 
 長旅おつかれさま。
 
 この先も「9つの紙飛行機」が
 ずっとずっと、どこまでも
 飛んでいきますように。