「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」を観る前におさえておきたい「6つのポイント」

 

f:id:sona99:20181103161953p:plain

ずっと一緒にいられますように」

 

 

f:id:sona99:20181104194129p:plain

「だからお祈りしておくの」
「いつか必ずまた一緒になれるようにって」

 

 

f:id:sona99:20181104202623p:plain

私が書いたことは現実になるんですわよ」
「私が転校するときにも書いてたでしょ」
"ずっと一緒"って」

 

 

f:id:sona99:20181104202932p:plain

この空は、つながってるよ」
「どんなに遠くても、ずっと、いつでも」

 

 

f:id:sona99:20181104204337p:plain

「大丈夫。空はちゃんとつながってる。
「どんなに離れて、見えなくなっても」
いつかまた一緒になれる

 

 

f:id:sona99:20181104194629p:plain

 
"ずっと一緒にいられますように"

 

 

 「ラブライブ!サンシャイン!!」2期の終盤、卒業間近の3年生はいつも「ある願いごと」をしていました。

 

 冬になり、ラブライブの決勝が迫り、ラブライブが終わっても、卒業が見えてきても、3人はいつも「ずっと一緒にいられますように」という「願いごと」を口にしていましたよね。

 

 でも、現実的に考えればこの「願いごと」は叶うとは思えません。だって、3人はこの先「別々の国」で「別々の道」を進むことを決めていて、もう3人とも『次の夢』に向かって走り出しているんです。

 

 だから「この先もずっと一緒にいる」なんてあり得ないはずで、それは自分たちが一番よく分かっているはずなんです。

 

 それでも3人は、叶うとは思えないこの「願いごと」を本気で口にしているように見えます。だってあの3年生が、2年前はあんなに「言葉が足りなかった」3人が、「この空はつながってるから」「だから必ずまた一緒になれるんだ」と、何度も何度も「言葉にしている」んです。

 

 「星」や「絵馬」に願わないといけないくらい「叶えるのが難しい願い」だということは分かっているのに、まるで自分たちに言い聞かせるかのように、それでも本気で叶えようと、確信を持って3人で誓い合っているように見えます。

 

 3年生のこの『切ない誓い』は一体、何なのでしょうか?

 

 この「矛盾を抱えた願い」の先には、何が待っているのでしょうか?

 

 

 


 

 ・・・と、こんな感じで本記事では来年公開の劇場版ラブライブ!サンシャイン!!と何となく関係がありそうなことを「6つ」、紹介していきたいと思います。

 

 記事の導入として触れた「3年生の願いごと」については、その中で改めて触れていこうと思います。

 

 また、本記事では「サンシャイン!!」のアニメシリーズの外にある要素にもガッツリ触れているので、以下の作品・楽曲の知識があると良いかもしれません。

 

・  劇場版ラブライブ!
・『SUNNY DAY SONG
・『HAPPY PARTY TRAIN
・『SKY JOURNEY』
・『MOMENT RING

 

それではいってみましょう。

 


 

  [目次]

 


 

 

1.「終わりにする」か「続ける」か

 

f:id:sona99:20181110032103p:plain

「大会が終わったら、μ'sはおしまいにします!」

 「ラブライブ!」のテレビシリーズのラストでは、「3年生が卒業したら終わりにするか、卒業しても続けるか」という「2択のテーマ」が取り上げられ、穂乃果たちは「μ’sを終わらせる」ことを選んでいました。

 

 それでも、それと同時に「残った6人で活動は続ける」とも言っていて、μ’sは終わりにするけど6人でスクールアイドルは続ける」ということも分かります。

 

f:id:sona99:20181123213226p:plain

「限られた時間の中で、精一杯輝こうとするスクールアイドルが好き」「見つかったよ、答え」

 そして劇場版ラブライブ! The School Idol Movie」では同じテーマがより深く掘り下げられ、μ’sはテレビシリーズと同じように再び「グループを終わりにする」ことを選びました。

 

 また、「スクールアイドルが好き」「スクールアイドルにこだわりたい」とも言っていて、「残った6人でスクールアイドルは続ける」ということもテレビシリーズと変わっていませんでした。「9人でプロになる」のではなく「6人でもいいからスクールアイドルにこだわりたい」ということです。

 

 これらの結論としてはテレビシリーズと同じですが、劇場版ではそこに至るまでに「女性シンガー」SUNNY DAY SONGといったとても重要な要素が追加されています。

 

f:id:sona99:20181123214128p:plain

「私たちは、続けることにしたの」

 一方でA-RISEは、その劇場版の中で「卒業しても続ける」という選択をしていました。「3人で一緒に歌っていきたい」「もっともっと大きな世界に羽ばたいていきたい」と言って、スクールアイドルの「ひとつの道」を穂乃果に示してくれましたよね。

 

f:id:sona99:20181110033247p:plain

「だから、姉さまにも皆にも喜んでもらえるスクールアイドルグループを作る」「見てて」

 そして続く「サンシャイン!!」の2期でSaint Snowの理亞は、姉の聖良が卒業しても「別のグループとして続ける」ことを選択しました。理亞は、「新しいグループの中で『違う形の雪の結晶』を見つけたい」「姉さまに喜んでもらうために」と言って、「姉のため」に「姉から離れる」ことを選んだのです。

 

f:id:sona99:20181110034057p:plain

「嬉しいんだって。」「お姉ちゃんがいなくても、別々でも、頑張ってお姉ちゃんの力なしで、ルビィが何かできたら嬉しいんだって。」

 なぜ理亞がその道を選んだのかといえば、それはたぶんルビィの「姉に対する想い」を聞いていたからですよね。ルビィが言っていたように「ひとりでもできる」ところを姉に見てもらいたいから、「そんな自分の姿を見て姉さまに喜んでもらいたい」から、「だから見ててね」とまっすぐ姉に伝える理亞の姿に、ルビィと一緒に走った成長の証が見えますよね。

 

f:id:sona99:20181124015604p:plain

「絶対に、優勝したい!」

 その成長はルビィも同じで、2期7話で廃校が確定したときにはラブライブで絶対に優勝したい」「お姉ちゃんたちの最後のラブライブだから」と言っていたルビィは、

 

f:id:sona99:20181115164325p:plain

「もちろん、お姉ちゃんたちの最後の大会だし、勝ちたいって思ってるけど」「今は、大好きな皆と一緒に歌えることが一番うれしい」

 ラブライブ直前の2期12話では「今は勝つことよりも、みんなと一緒に歌えることのほうが嬉しい」と言っていて、気持ちが変化していました。 

 

f:id:sona99:20181112114856p:plain

 

 7話で「勝ちたい」と言っていたルビィが12話で「みんなと一緒のほうがうれしい」と思うようになったのは、8話と9話で「勝つこと」にこだわっていた理亞がステージでつまづいて、それでもそこから立ち上がって『雪の結晶』を取り戻すために走ったその姿を、誰よりも近くで見ていたからですよね。

 

 ルビィは、理亞の走る姿を見て「勝つことよりも大切なものがある」ということに気付くんです。

 

 こう見るとルビィと理亞は「Awaken the power」の後もちゃんと前に進んでいて、あのとき一緒に走った2人は、そのまましっかりと前を見て走り続けていることが分かります。

 

f:id:sona99:20181125235514p:plain

 

 

 

 さて、ここまでの3つのグループの進退をまとめると、μ’s「終わらせてから6人で続ける」A-RISEは「そのまま続ける」Saint Snow「終わらせてから理亞だけ続ける」という感じになります。

 

f:id:sona99:20181205141521p:plain

 

 また、「ラブライブ!」の中では意識的に言葉がボカされていますが、同じ「続ける」でもA-RISEは「グループはそのままで、プロのアイドルとして続ける」 で、μ’sグループは解散するけど、残った6人でスクールアイドルを続ける」Saint Snowグループは解散するけど、理亞だけ新しいグループの中でスクールアイドルを続ける」という違いがあることに注意してください。

 

f:id:sona99:20181205144210p:plain

 

 A-RISEは「高校3年間の」で「そのまま続ける」道を選び、μ’sの6人とSaint Snowの理亞は「高校3年間の」で「新しく続ける」道を選んだということです。

 

 劇場版で「Aqoursが出す答え」を見る前に、これらのμ’s」「A-RISE」「Saint Snow」のそれぞれが選んだ「道の違い」と、「なぜ理亞はその道を選んだのか」を頭の中で整理しておきましょう。

 

 

 

 

2.「純粋な気持ち」と「輝き」 

 

 2つめのポイントに行きますが、ここでは劇場版「ラブライブ!The School Idol Movieを掘り下げつつ「サンシャイン!!」の物語を深めていこうと思います。

 

 これは「同じ劇場版どうしだから何か関係がありそう」 という意図もありますが、実は「サンシャイン!!」と「The School Idol Movie」は強く結びついているから掘り下げてみよう、という意図がメインになります。

 

 今回は、劇場版「ラブライブ!The School Idol Movieを観ていない人にも分かるようにストーリーを追いながら説明しますが、観ていない人はできれば、というかぜひ観てください。

 

 劇場版「ラブライブ!The School Idol Movie」のストーリーは実はとてもシンプルで、「他人の期待」や「他人の意見」といったものを抱えて道に迷ってしまった穂乃果たちが、自分の中の「純粋な気持ち」を見つけ出すというお話になっていました。

 

f:id:sona99:20181124022308p:plain

 

 ラブライブ優勝によってニューヨークに招かれた穂乃果たちでしたが、その公演の成功によってファンの声が大きくなりμ’sを終わりにするか続けるか」について意見が割れてしまい、穂乃果は「分かれ道」に立たされることになります。

 

f:id:sona99:20181124022834p:plain

「お願い!」「友達だって言ったら、たくさんの人が見たいって!」

f:id:sona99:20181124023403p:plain

「みんな、μ'sには続けてほしいと思っている」

f:id:sona99:20181124023541p:plain

「わたしは反対よ」

f:id:sona99:20181124023708p:plain

「でも、大会を成功に導くことができれば、スクールアイドルはもっと大きく羽ばたける

f:id:sona99:20181124023902p:plain

「真姫の言う通りよ。ちゃんと終わらせるって決めたんなら、終わらせないと」

f:id:sona99:20181124024106p:plain

「もしμ'sを終わりにしちゃったら、ドームは無くなっちゃうかもしれないよね…」

f:id:sona99:20181124024716p:plain

「だからμ'sは、いつも『楽しく』いて欲しいです」

f:id:sona99:20181124025348p:plain

「でも、わたしたちは続ける。あなたたちにも続けてほしい」

 

f:id:sona99:20181124024329p:plain

「穂乃果は、どう思うの?」

 

 そんなたくさんの意見の中で、穂乃果自身も何が正解なのか、どの「道」を選べば良いか分からなくなっていたとき。穂乃果は、過去に同じような「分かれ道」を経験していた女性シンガーと出会います。

 

f:id:sona99:20181127232803p:plain

「簡単だったよ。とっても簡単だった」

f:id:sona99:20181124030007p:plain

「今まで自分たちが"なぜ歌ってきたのか"。"どう在りたくて"、"何が好き"だったのか」「それを考えたら、答えはとても簡単だったよ」

 その女性は、「答えはとても簡単だった」だと言います。

 

 自分が「なぜそれをしてきたのか」「どう在りたくて」「何が好きだったのか」と、少しずつ「心を分解」していき、心の奥にある「純粋な気持ち」に目を向ければ答えは見つかるんだよ、と言うのです。

 

f:id:sona99:20181204160208p:plain

 上の図のように、「心」をタマネギのようなレイヤー構造だと見ると分かりやすいかもしれません。余計な「皮」を取り除いた奥にある「芯」の部分が「純粋な気持ち」です。

 

 女性シンガーは、この「自分の中の純粋な気持ち」さえ見えれば「答えは簡単」だと言っているわけです。

 

f:id:sona99:20181124031634p:plain

「跳べるよ。いつだって跳べる」
「あの頃のように」

 

 そして女性シンガーは「いつだって跳べる」「あの頃のように」と穂乃果に言います。「あの頃」というのはもちろん冒頭の回想シーンで流れた「子供の頃」のことです。

 

 「子供の世界」は人とのしがらみ将来への不安は存在せず、「今この瞬間」の「純粋な気持ち」だけで支配されていますよね。

 

f:id:sona99:20181124033113p:plain

 

 どんな大人でも、子供の頃はまわりを気にすることなく「自分がやりたいこと」のためにまっすぐ走っていたはずです。

 

 まわりが何を言おうと、どんな目で見られようと、「今この瞬間、心からやりたいこと」のために、迷いなく行動していたはずです。

 

f:id:sona99:20181124032733p:plain

f:id:sona99:20181124032912p:plain

f:id:sona99:20181124043205p:plain

 

 そんな「子供の頃」のように「いつだって跳べる」と言っているのです。

 

 どこからともなく聞こえてきた「あの歌」に乗って走り、大きな水たまりの上を跳んだあの日の穂乃果のように。

 

 「跳ぶ」というのは、幼い穂乃果が水たまりを「跳んだ」ところからきていますが、ミュージカル作品において「跳ぶ / 飛ぶ」という行為は非常に汎用的な比喩のひとつで、以下のような意味を持っています。

 

  •  心が軽くなる
  •  何かを「乗り越える」
  •  何かから「解放される」

 

 イメージでいえば、「重力=抑圧」から解放されて心が軽くなり、ふわっとジャンプする、みたいな感じでしょうか。

 

 女性シンガーはなぜ「いつだって跳べる」と言ったのでしょうか?

f:id:sona99:20181127232803p:plain

「簡単だったよ。とっても簡単だった」

 なぜ「簡単なこと」なのでしょうか?

 

 女性シンガーのシーンでは「その理由」が語られていないように見えますが、これは「理由が語られていないこと自体が理由になっている」という読み方で良いと思います。

 

 つまり、それは「ただ跳ぶだけ」だから、なんです。

 

 だから理由を語る必要はないし、「簡単なこと」だし、「いつだって跳べる」んです。女性シンガーは言葉にはしていませんが、ただ「自分が跳ぶ」のを「自分の心が阻んでるだけ」だというようなことを穂乃果に言っているのです。

 

f:id:sona99:20180902060945p:plain

f:id:sona99:20180219221147p:plain

f:id:sona99:20180219231518p:plain

 

 大人になって「まわり」が見えてくると「足が動かなくなるだけ」なんだよ、と穂乃果に言っているんですね。

 

 きみは本当は「いつでも跳べる」んだよ。「子供の頃の純粋な気持ち」はいつも心の中にあって、「跳べる足」はもう持っているのだから、それは「とても簡単なこと」なんだよ。

 

f:id:sona99:20181124213642p:plain

 

 女性シンガーの言葉を受けた穂乃果は「目を閉じて」高く跳び上がります。「目を閉じる」というのは「まわりの意見は気にしない」という表現でしょう。

 

 このとき、穂乃果にとって「跳ぶ」ためのトリガーになったのは「歌」であり、高坂穂乃果というキャラクターのルーツには「歌」があるということも分かります。

 

 そうして自分の中の「純粋な気持ち」と向き合った穂乃果たちは「終わらせる」ことを選び、さいごにあの「きっかけの歌」を歌います。雨上がりのあの日、幼い頃の穂乃果が聞いた「あの歌」を。

 

SUNNY DAY SONG

 

SUNNY DAY SONG

SUNNY DAY SONG

高く跳び上がれ

どんなことも乗り越えられる気がするよ

 

 『SUNNY DAY SONG』の歌詞だけを読んだら「普遍的な応援歌」になりますが、劇場版の内容を踏まえると「子供」「純粋さ」「跳ぶ」という情報がプラスされて、歌詞以上の具体性を持っていることが分かります。

 

 雨上がりのあの晴れた日、「純粋な気持ち」で満たされていた子供の頃、あなたはどうやって水たまりを跳んでいましたか?

 

 あの日と同じように「純粋な夢」だけを見て高く跳び上がることができれば、どんなことでも乗り越えられる気がするでしょう?

 

 

f:id:sona99:20181124031634p:plain

「跳べるよ。いつだって跳べる」

 

 このように、「The School Idol Movie」の大きなテーマのひとつは「純粋な気持ち」であり、それは「しがらみ」や「将来への不安」「他人の意見」といった余計なものを取り除いた奥にある「根源的な気持ち」のことなんですね。それは「子供の頃」はみんな見えていたものです。 

 

 

SUNNY DAY LIFE

SUNNY DAY LIFE

『輝き』になろう

 

 そして、この「純粋な気持ち」は『SUNNY DAY SONG』に乗って『輝き』という言葉に姿を変え、

 

f:id:sona99:20181124231516p:plain

「わたしも、『輝きたい』って!」

遠く離れた「Aqours」という小さなスクールアイドルの前にやってくることになります。

 

 

f:id:sona99:20180218164622p:plain

 

 梨子は「他人の期待」という「重さ」のせいで、手が動かなくなってしまっていました。

 

f:id:sona99:20180218174553p:plain

 

 ルビィは「姉への配慮」と「親友と一緒にいたいという気持ち」で、自分の「純粋な気持ち」を覆い隠していましたよね。

 

f:id:sona99:20181128000652p:plain

 

 果南は「鞠莉の将来のため」という想いを優先するあまり、鞠莉に対して「自分の本当の気持ち」と正反対の行動を取ってしまっていました。

 

 そして花丸は「できるかどうか」という気持ち、善子は「他人の目」がそれぞれの「純粋な心を覆い隠すもの」でした。

 

f:id:sona99:20180219220739p:plain

お客さんにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない自分が一番好きな姿を、輝いてる姿を見せることなんだよ

 

f:id:sona99:20180218194519p:plain

「μ'sみたいに『輝く』ってことは、μ'sの背中を追いかけることじゃない。『自由に走る』ってことなんじゃないかな」「全身全霊、何にもとらわれずに。自分たちの気持ちに従って

 

f:id:sona99:20180218205859p:plain

「奇跡を最初から起こそうなんて人、いないと思う」「ただ一生懸命、夢中になって何かをしようとしている何とかしたい、何かを変えたいそれだけのことかもしれない」

 

 1期5話「ヨハネ堕天」や1期12話「はばたきのとき」、2期3話「虹」で千歌は『輝くこと』について語っていましたが、その内容はまさに女性シンガーが言っていた「純粋な気持ち」と全く同じものになっていますよね。

 

f:id:sona99:20181125025402p:plain

 

 そして千歌は1期12話のその後、部屋に飾っていた「μ’sのポスター」を外していたことから、千歌にとっての「心を覆うもの」は「憧れの気持ち」だったことが分かります。

 

 しかしもちろん、「憧れ」という感情自体はとても大切です。Aqoursは「μ’sへの憧れ」、Saint Snowは「A-RISEへの憧れ」から生まれたグループですしね。

 

『届かない星だとしても』

 

憧れるって素敵だよ

とにかく全部真似したい

 

 「届かない星」だとしても、まず「手を伸ばす」ことが「全てのはじまり」なんです。「手を伸ばさないとはじまらない」んです。

 

f:id:sona99:20181125034146p:plain

「でも、ただ見てるだけじゃはじまらないって。」

 千歌たちも「ただ見てるだけ」ではなく、μ’sと同じように「3人」で「学校の中で初ライブ」をすることが「ファーストステップ」でした。最初は「μ’sに手を伸ばす」ところからはじまったんです。

 

 しかしそれでも「憧れのポスターを外す」ということは、ずっとそのままだと「次の一歩」が踏み出せない、ということなんだと思います。

 

 自分が「なぜそれをしてきたのか」「どう在りたくて」「何が好きだったのか」と、「憧れ」を紐解いたその中に一番大切なものがあるんだと女性シンガーも言っていましたよね。

 

f:id:sona99:20181202172035p:plain

 

 はじめは「憧れた人の道」をなぞっていても、 途中からはその道から外れて、道路も地図もまだ無い「自分だけの道」を走ることが大切で、それを見つけるためには「自分の中の純粋な気持ち」を理解する必要があるんです。

 

f:id:sona99:20180228171757p:plain

「最初からあったんだ。はじめて見たあのときから。」

 そして千歌は最後に、『輝き』は「はじめからあった」という答えを見つけました。最初は色んな気持ちに覆われてはいましたが、みんなそれぞれ『9人の純粋な気持ち』は確かに自分の中にありましたよね。

 

監督 / 酒井和男

"純粋な欲"は心のエンジンなんです。情熱でどこまでも走っていくような……それがなければ物語は始まらない。

 

 そして「サンシャイン!!」の酒井監督は、「純粋な欲」について1期のオフィシャルブックで言っていますが、これが『輝き』の正体を端的に表した言葉になっています。そしてこれはまさに「The School Idol Movie」のテーマになっている「純粋な気持ち」そのもので、酒井監督が「サンシャイン!!」を作るにあたって「The School Idol Movie」を参考にしたのは明白だと言っても良いと思います。

 

 もしかしたら、「サンシャイン!!」というタイトルは『SUNNY DAY SONG』の『SUNNY』から付けられたのかもしれません。

 

f:id:sona99:20181202173251p:plain

 

 実際には分かりませんが、ふたつの作品がこんなに明確に、こんなに分かりやすくつながっているならそれくらいあっても良さそうですし、なによりSUNNY DAY SONG』は「未来のスクールアイドルに贈る歌」でしたよね。

 

 そしてなぜ酒井監督が「純粋な気持ち」を『輝き』という言葉に変換したのかをちょっと想像してみると、『SUNNY DAY SONG』の歌詞の中に『輝き』が出てくるのと、あと不純物の少ない「純粋なもの」ってキラキラと輝くようなイメージがありませんか?

 

f:id:sona99:20181202195230p:plain

 宝石は「純度」が高ければ高いほど『輝く』ように、人の心も『宝石』と同じ」「心の『純度』が高ければ『輝く』」という発想だと思います。ちょうど「サンシャイン!!」のキャラクターの中に宝石の名前を持った姉妹もいますしね。

 

 

 以上、「The School Idol Movie」のメインテーマ「サンシャイン!!」の中の『輝き』の関係性についてのお話でした。

 

 

 

3.「子供」と「未熟DREAMER

 

 「子供の世界にはしがらみや不安は無い」ように、「子供である」ということはただそれだけで「純粋さの象徴」になるので、「子供」と「ラブライブ!」の親和性はとても高いことが分かります。

 

f:id:sona99:20181125040948p:plain

 

 ここまでにもう何度も出てきているように、「The School Idol Movie」の冒頭には「子供の頃の穂乃果たち」が出てきますが、「サンシャイン!!」ではそれ以上に「子供 = 純粋さ の構図」が徹底されています。

 

f:id:sona99:20180218194043p:plain

「大丈夫!」

 「サンシャイン!!」の1期で、千歌が「輝き」とは何なのかを見つけるきっかけとなったのは「穂乃果に似た子供」でした。なんの不安もなく自由にまっすぐ走るその姿に、千歌は「輝きのヒント」をもらいます。

 

f:id:sona99:20181124032733p:plain

「だって、ピアノ弾いてると空飛んでるみたいなの」「自分が、キラキラになるの。お星さまみたいに」

 子供の頃の梨子は「ピアノを弾くとキラキラする」「空を飛んでいるみたい」と言っていました。

 

f:id:sona99:20181124032912p:plain

「わたし、本当は天使なの!」

 子供の頃の善子は、「自分は本当は天使なんだ」「今は堕天してるだけ」だと言い、「いつか羽根が生えて大空に羽ばたくんだ」と言っていました。

 

f:id:sona99:20181124040831p:plain

「ルビィは強い子でしょ」「勇気をお出しなさい」

 子供の頃のルビィは、姉のダイヤから「勇気」をもらっていました。それは「転んでもそこから立ち上がる勇気」です。

 

 2期9話「Awaken the power」では、ルビィと理亞が力を合わせて「その勇気を一緒に取り戻す」というお話になっていました。

 

f:id:sona99:20181124042924p:plain

「あの瞬間から、『雪の結晶』をSaint Snowのシンボルにしようって」

 Saint Snowのふたりは子供の頃に『雪の結晶』を見つけ、それを「二人だけのシンボル」にしました。

 

 成長した二人は、高いパフォーマンスを目指すうちに「勝ち負け」にこだわるようになり、いつしかその『一番大切なもの』が見えなくなっていましたが、ルビィが持つ「光」の力を借りて『雪の結晶』を取り戻すことになります。

 

f:id:sona99:20181115170041p:plain

 

 

 こうやって見ていくと、本当に徹底して「子供」の描写が入っているのが分かると思います。

 

  そして、1期10話「未熟DREAMER」ではこの「子供」の描写が特に重要になってきます。

 

f:id:sona99:20181124043205p:plain

 

 子供の頃の果南は「あの子と友達になりたい」という一心で、異国から来た金髪の少女とハグをしていました。あの頃の果南は、まわりの目を気にすることなく「今すぐにでもあの子と仲良くなりたい」という気持ちだけで動いていたんです。

 

f:id:sona99:20181201154940p:plain

 

 ふつう、言葉が通じるか分からない相手と仲良くしようとは思いませんよね。でも子供の果南はそのために「ハグ」という「外国の挨拶」を自分なりに調べて、いつでも「あの子と仲良くなる準備」をしていたのかもしれない、そのくらい果南は鞠莉のことが大好きだったのかな、という想像もできます。

 

 

 しかし高校生になった果南は、そんな「子供の頃から大切な親友」の「将来」を守るために、自分を犠牲にする道を選んでしまいます。

 

f:id:sona99:20180219231518p:plain

先生「本当に断るの?」鞠莉「わたし、スクールアイドルはじめたんです。学校を救うために」 

 あるとき果南は、鞠莉が職員室で「留学」を薦められているのを聞いてしまいます。そのとき鞠莉は「スクールアイドルをはじめたから」「学校を救うために」と言ってそれを断っていました。しかしそれは鞠莉が先生に向けて言った言葉であり、「大人に向けた言葉」だということが分かります。「職員室」は「大人の空間」なんですね。

 

f:id:sona99:20181201214035p:plain

「留学?全く興味なかった」「だって果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずがない」

 でも、鞠莉が留学を断った本当の理由は「果南のため」だったことが後から分かります。鞠莉が本心を話すシーンでは「留学には全く興味無かった」 「東京で歌えなかった果南を放っておけるはずがない」と言っていて、これが鞠莉の本当の気持ちなんです。

 

 でも「大人の空間」の職員室で、そんなこと言えるわけないですよね。逆に職員室で「友達のため」と言わなかった鞠莉は「大人」の部分を持ったキャラクターだということが分かります。

 

f:id:sona99:20181201213543p:plain

 

 しかし、そんな「鞠莉の大人の言葉」を「職員室の外」で聞いていた果南は、一瞬だけ悲しそうな顔をした後に「スクールアイドルをやめる決意」をします。だって、鞠莉をスクールアイドルに誘ったのは果南でしたからね。果南は「自分のせいだ」と思ったのかもしれません。

 

f:id:sona99:20181202013751p:plain

「うんって言うまでハグする!」

 鞠莉が「自分の意志」で留学を断っているならまだ分かりますが、果南が半ば強引に誘ったスクールアイドルのせいで鞠莉の将来が奪われるなんて、果南にとっては絶対に許せないと思います。だからスクールアイドルをやめて、「本当は子供の頃のように鞠莉と一緒にいたい」けど、自分だけその気持ちを我慢して鞠莉を留学に送り出せば、鞠莉の未来を守ることができると判断してしまうんですね。

 

 果南は、子供の頃からずっと大好きな、転校してきてからずっと大好きな親友のために、「その親友から離れる」という選択をしてしまうんです。

 

f:id:sona99:20181201214035p:plain

「留学?全く興味なかった」「だって果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずがない」

 でも、鞠莉が留学を断るときに言った「スクールアイドルをはじめたから」というのは本当の理由ではありませんでしたよね。鞠莉は本当は「果南のため」に留学を断っているんです。

 

f:id:sona99:20181125201043p:plain

 

 それは子供の頃、異国の学校に転校してきてからずっと自分のことを好きでいてくれる、大切な大切な親友のためでした。

 

そんな「お互いに大切な親友」だったふたりは、それでも「大人の言葉」が原因ですれ違ってしまったふたりは、千歌たちの働きかけもあって、互いに本心を話すことになります。

 

f:id:sona99:20181125201426p:plain

f:id:sona99:20180219232839p:plain

 

 ふたりが本心を話し、ハグをして仲直りをするそのシーンには、子供の頃からずっと「大切な親友」だったふたりの気持ちの全てが詰まっています。  

 

 ふたりにとって「ハグ」の持つ意味ハグの前の「子供の頃」の回想果南がハグをしようとしたときに一瞬驚いた顔をする鞠莉すぐにその意味が分かって泣きながらハグをするふたりその全ての描写に「子供の頃からふたりが一緒に歩いてきた時間」と、2年間離れていても消えない強い絆」が表れています。

 

 

 この後3人は新しいAqoursに加わり、再びスクールアイドルとして3人一緒に走り出すことになります。果南にとっては「枷」だった「スクールアイドル」は、ここを起点に「かけがえのないもの」へと変化し9人になったAqoursはこの後、『奇跡の波』を起こすことになります。

 

 その変化は鞠莉にとっても同じで、2年前に果南に誘われたときには「そういうの、興味無いの」と言っていた鞠莉は、劇場版の本予告では「大人」に向かって「スクールアイドルはくだらなくなんかない!」と言っています。鞠莉にとって誰よりも大切な親友と過ごした時間が、「くだらない」はずがないんです。

 

 このように、1期9話「未熟DREAMER」では「子供」というモチーフがとても重要になっていて、「大人と子供が共存する『高校生』という時間」 「青春が終わり大人の世界がはじまる境界線」のような、「ふたつの世界」が交差するような気持ちの揺れ動きが「果南と鞠莉のすれ違い」の中にあるんですね。

 

 劇場版の本予告では「鞠莉が結婚する」というようなセリフもあるので、この「未熟DREAMER」で描かれたような「大人と子供が共存する世界」が違った形でもう一度描かれるかもしれませんね。

 

 

f:id:sona99:20181125202650p:plain

 

 そしてHAPPY PARTY TRAIN』のMVには、なぜかいきなり子供の姿のAqoursメンバーが登場します。いいえ、ここまで読んでもらえれば「なぜ子供なのか」はもうはっきりと分かると思います。この子たちは「あの頃の純粋な気持ちの象徴」で、そんな子たちが電車に乗る果南を笑顔で見つめているんです。

 

 『HAPPY PARTY TRAIN』のMVでは、「卒業後の進路に悩む果南」が描かれています。特に冒頭の地球儀は「日本とオーストラリアの距離」を示すような位置でピタリと止まり、まるで「果南の迷い」が映像として描かれているようです。(つまりこのMVを作っている時点で果南のオーストラリア行きは決まっていたんですね・・・)

 

f:id:sona99:20181116001046p:plain

↑日本とオーストラリアの位置でピタリと止まります。

 つまり果南はこのMVで「卒業後はオーストラリアに飛ぶか飛ばないか」「自分の夢を追うか追わないか」を迷っているんですね。

 

f:id:sona99:20181125211244p:plain

 

 そしてそんな迷いの表情で電車に乗る果南が、突然現れた子供の頃の自分と手をつないだその瞬間、電車は高く跳び上がりその軌跡は虹色に輝きはじめました。「子供」を「純粋な気持ち」に置き換えると、果南は「自分の中の純粋な気持ち」に従って高く飛んだ、ということです。「電車が飛んだ」というのは「オーストラリアに飛ぶことを決めた」くらいに読めば良いでしょう。

 

 よく考えると、このシーンの「飛ぶ」「子供」の使われ方は「The School Idol Movie」の「あのシーン」と全く同じですよね。

 

f:id:sona99:20181124031634p:plain

「飛べるよ、いつだって飛べる。あの頃のように」

 「飛べるよ」「あの頃のように」という言葉はまさにそのままで、このセリフが『HAPPY PARTY TRAIN』のMVの中でそのまま果南に言われたとしても、全く違和感ないですよね。

 

 「未熟DREAMER」のときの子供の果南は「あの頃の気持ちを思い出して?」と言っているようでしたが、『HAPPY PARTY TRAIN』の子供の果南は「自分の夢を思い出して?」と言っているみたいですよね。

 

f:id:sona99:20181203182238p:plain

 

 「アニメ本編」で言えば、骨折した父親のために休学を選んだり、鞠莉の将来のために、千歌が怪我しないようにと「いつも他人のために自分を犠牲に」してきた果南でしたが、ラストでは「自分のため」に、「自分の夢を叶えるため」に海外へ飛び立つことを決めていましたよね。

 

f:id:sona99:20181125210613p:plain

「私は海外でダイビングのインストラクターの資格、ちゃんと取りたいんだ」

 つまりアニメの果南は、千歌たちの「輝き」に触れる中で自分の夢」を思い出し、さいごには「純粋な気持ち」で海外へ高く飛び上がることができたという流れになっていて、これは『HAPPY PARTY TRAIN』のMVと同じ展開なんです。

 

f:id:sona99:20180228192825p:plain

「ありがとう、千歌」

 果南がAqours WAVE」 で千歌に言った「ありがとう」という言葉の中には、そのことに対する想いも込められているのかもしれません。果南にとって「Aqours WAVE」は大きなターニングポイントになっていて、「バク転を跳んでくれてありがとう」という意味に加えて、「自分の夢を信じさせてくれてありがとう」と言っているのかもしれませんね。

 

 

 というわけで「子供」が何を象徴しているのかを細かく見ていきましたが、「未熟DREAMER」と『HAPPY PARTY TRAIN』で2回も「子供」を使いながら心の動きが描かれている「松浦果南」というキャラクターの持つ「裏の主人公」という側面が見えてきたと思います。

 

 

 

4.「SKY JOURNEY」

 

 HAPPY PARTY TRAIN「2期終盤の松浦果南を描いているのなら、この記事の冒頭に書いた「3年生の願いごと」も『HAPPY PARTY TRAIN』と近い位置にあるような気がしますよね。

どちらも「2期終盤」で「3年生」ですから。

  

f:id:sona99:20181104204337p:plain

「大丈夫。空はちゃんとつながってる
「どんなに離れて、見えなくなっても」
いつかまた一緒になれる
 

 そしてこれも冒頭で書きましたが、そんな「願いごと」を聞いた視聴者の中には「3人はバラバラになるんだよね?」「なんでそんな願いごとを何度もしてるの?」と思った人もいるかもしれません。

  実は、それと同じような「疑問」がHAPPY PARTY TRAIN』のカップリング曲である『SKY JOURNEY』の中でも語られているんです。

 

『SKY JOURNEY』

 

胸に確かなもの持ってたら

それだけでなんとかなるって

なぜ優しく語れるのだろう?

 

夢叶えたいからいつでも

諦めないことが大事だと

なぜ本気で語れるのだろう?

 

 この歌詞はもう、「視聴者の疑問」を代弁しているみたいですよね。

 

 そう聞こえるのにはちゃんと理由があって、作詞をした畑亜貴先生は2期のオフィシャルブック(86ページ)で「この2曲はAqoursとファンが交差するような曲」だと言っているんです。

 

 単体で聞けば「応援歌」であるこの2曲は、ふたつセットで聞いたときにはHAPPY PARTY TRAIN』が「Aqoursの視点」『SKY JOURNEY』が「ファンの視点」に立ったような歌詞にもなっているんだと、畑先生自身が「解釈のひとつ」をはっきりと説明しています。

 

f:id:sona99:20181218181223p:plain

 つまり、この2つの曲は「テーマは同じ」だけど「立場が違う」ように作られている、ということです。

 

 『HAPPY PARTY TRAIN』の中では「駅」「夢」 を表していて、「ひとつの駅」に到着しても「次の駅」に向かおう、と言っています。レールはどこまでつながってるか分からないけれど、駅から駅を乗りついでどこまでも行きたいね、ずっと走っていきたいね、と言っているんです。

 

 これはラブライブで優勝し「ひとつの夢」に到着したけれど、そこで止まらずに「次の夢」に向かって新しく出発しようとしている2期終盤の3年生の気持ちそのままですよね。それは「子供」が出てくる『HAPPY PARTY TRAIN』のMVからも分かることです。

 

f:id:sona99:20181218155229p:plain

 

 そして『SKY JOURNEY』では、そんな『HAPPY PARTY TRAIN』に乗っている果南たちを見た「空の旅人」が、「どこから来たの?」「なぜ夢を本気で語れるの?」と疑問を口にしたり、「きっと"切ない誓い"があったのだろう」と想像しているような歌詞になっているんです。

 

 つまり『SKY JOURNEY』とはAqoursと出会った私たちファンの旅路」のことで、その中の「切ない誓い」という歌詞は、「ずっと一緒にいられますように」という「叶わない願いごと」と重なるような感じがしますよね。

 

 そんな「切ない誓い」をいつも胸の中に持ってるから、笑顔で「次の夢」に向かって、オーストラリアへ飛ぶことができたんだね、という感じでしょうか。

 

f:id:sona99:20181218203000p:plain

 

 空の向こうから、電車に乗った9人の少女たちがとても楽しそうに、夢を本気で語りながらやってきます。

 そこに偶然通りかかった「空の旅人」は、彼女たちのそんな姿に惹かれつつも「きっと"切ない誓い"があったから、そんなふうに笑って前に進めるんだね」とつぶやいている、そんな「ふたつの曲に込められた空の景色」「ふたつの視点が出会う場所」のようなものが見えてくると思います。

 

 もちろん、単体の楽曲として聞くときは「3年生」や「卒業後の進路」に限定する必要は全くなくて、歌詞通りの「応援歌」として取るのが良いと思いますが、

 

  • HAPPY PARTY TRAIN』のMVが「アニメ2期終盤」のものであること
  • 畑先生が説明している『HAPPY PARTY TRAIN』と『SKY JOURNEY』のつながり

 

の2点を踏まえて、この2曲を物語に引き付けて解釈した場合アニメシリーズの終盤から劇場版にかけての時期の3年生と、それを見る視聴者の関係を歌った曲」というふうに「限定的な解釈をすることもできる」、ということです。

 

f:id:sona99:20181218155502p:plain

 

 つまりHAPPY PARTY TRAIN』と『SKY JOURNEY』の関係は、「劇場版に向かう3年生」と「劇場版に向かう視聴者」の関係とてもよく似ているということで、そう考えるとこの2曲は「劇場版の裏にあるテーマ曲」だと言っても良いのかもしれませんね。

 

 「キャラクターがいるスクリーンの中」は『HAPPY PARTY TRAIN』で、「視聴者がいるスクリーンの外」は『SKY JOURNEY』、という感じでしょうか?

 

 

 

5.「今」と「永遠」

 

f:id:sona99:20181110233213p:plain

 

 冒頭に書いた「3年生の願いごと」を考えるうえで、ラブライブ!」の中の「今」という時間の考え方をしっかりと抑えておきましょう。

 

 劇場版の穂乃果も言っていましたが、「ラブライブ!」とはそもそもスクールアイドルの物語」であり、学校」=「限られた時間の中」の物語です。

 

f:id:sona99:20181123213226p:plain

「限られた時間の中で、精一杯輝こうとするスクールアイドルが好き」

 期間限定の活動であるため、行動を起こせずに迷っているとすぐに「時間切れ」になってしまいます。そのためこの作品では「今この瞬間にある気持ち」それに従って行動すること」の大切さを伝えてきました。

 

 「過去」や「未来」にとらわれて迷ってないで、「今この瞬間に自分がやりたいこと」をやろう。なぜなら、あらゆるものは「期間限定」なのだから、時間は有効に使おうよ。

 

 ということです。言ってしまえば人生だって期間限定ですしね。

 

f:id:sona99:20181112183808p:plain

 

 簡単に言えば、「時間切れにならないように今すぐにでも行動しよう」 「時間切れにならないうちに思いっきり楽しもう」ということですね。

 

 

 「今」の大切さはラブライブ!」の楽曲の中に「今」が頻繁に出てくることからも分かりますが、その中でもアニメの中で重要な位置にあるのは以下の3曲でしょうか。

 

1.『愛してるばんざーい!

私たちは今を楽しもう

昨日に手をふって ほら前向いて

 

2.『Angelic Angel

明日じゃない

大事なときは今なんだと気が付いて

 

3.『WATER BLUE NEW WORLD』

今は今で昨日と違うよ

明日への途中じゃなく 今は今だね 

 

今を重ね そして未来へと向かおう

この瞬間のことが重なっては消えてく

 

 ここで注目するところは、Aqoursの「WATER BLUE NEW WORLD」には「今を重ねて未来へ向かう」「この瞬間が重なっては消えていく」という表現があることから、「サンシャイン!!」には「今」という「点」を積み重ねて「線」にするという意識があるということです。

 

f:id:sona99:20181113121629p:plain

 

 そしてそれは、「0から1へ、1からその先へ」というキャッチフレーズ「虹」というモチーフにもはっきりと表れていて、一歩一歩を積み重ねて描かれたその「道」はAqoursの軌跡」を表していました。

 

f:id:sona99:20180228172637p:plain

 

 この「虹の軌跡」については本ブログでも取り上げているので、劇場版の前にぜひ一読してもらいたいです。

 

sona99.hatenablog.com

 

 そして、上に挙げた3曲とは違ってアニメの中の曲ではありませんが、Aqoursの先輩にあたるμ’sの歌の中には「点と線の先にあるもの」を歌っている楽曲が存在していて、μ’sが最後にたどり着いた「ひとつの答え」を、私たちは聞いたことがあるような気がします。

 

f:id:sona99:20181120173400j:plain

 

 それは「The School Idol Movie」の後に発表されたμ’sのファイナルシングル」で、その「最後の歌」の中で穂乃果たちは、自分たちの手の中にある「青春を閉じ込めた指輪」を私たちに見せてくれました。

 

MOMENT RING

 

瞬間をリングへと閉じ込めて

いつも眺めていたい

どの指がいいかな

キラキラの毎日を

ずっと忘れずにいてよ

  

 その「指輪」の名前はMOMENT RINGで、それは「あのときの9人の時間と空間と気持ちが詰まった指輪」=「一瞬一瞬の『思い出』を閉じ込めたリング」でした。

 

 Aqoursから入ったから『MOMENT RING』は知らないよ、という方は続きを見る前に歌詞だけでも良いのでざっと見てもらえたらうれしいです。

 

 

 『MOMENT』というのは「一瞬」のことで、ラブライブの文脈では「"今"という点」のことを指しています。『MOMENT RING』の歌の中で穂乃果たちは「"今"をつなげて指輪を作り、その輝きをいつも眺めていたい」と言っているんですね。

 

f:id:sona99:20181113115354p:plain

 

 つまり、一本の線の「始点」と「終点」をつなげて「輪」をつくる、という感じでしょうか?

 

 もしそうなら、たくさんの「今」を重ねつづけて「輪」を作れば、「今」がループして「永遠」になるんだ、というようなメッセージが見えてきます。

 

 しかしここからが重要なのですが、「永遠」と言っても『MOMENT RING』の歌詞には「あの瞬間を繰り返したい」というようなニュアンスは無く、「小さな指輪に閉じ込めていつも眺めていたい」=「ずっと保管しておきたい」という意味の「永遠」になっていることに注意してください。

 

 歌詞の中の「閉じ込める」や「眺める」という言葉のチョイスは本当に絶妙で、思い出は「近くにはある」けど「手は届かない」ような様子がよく分かります。

 

f:id:sona99:20181203161154p:plain

 

 自分がリングの中に入ったり 、手を加えたりはせず、ただ「眺めるだけ」で良いんだと言っているんですね。

 

思い出だけじゃないからね

終わらない青春はここにある

僕たちが知ってるよ

 

 それは、その後の歌詞ではっきりと「思い出だけじゃないからね」と言っていることからも分かりますが、「思い出」の他に何があるのかといえば、「終わらない青春」は「ここ」にあると言っていて、つまり「青春は"思い出"の中だけじゃなく、今"ここ"にもあるんだ」 「僕たちは今も青春の中にいるんだ」というようなことを言っているんです。

 

f:id:sona99:20181203140228p:plain

 

 つまり『MOMENT RING』の歌の中には2種類の青春」が入っていて、ひとつは「思い出の中にある小さな青春」でもうひとつは「今まさに走っている大きな青春」この「大小2つの青春」の中で世界は動いているんだ、というようなメッセージが見えてきます。

 

 さらにそのまま「メッセージの続き」を読み解くと、今走っている「大きな青春」も走り終えたら「思い出」になって「指輪」に姿を変え、また別の指に付けることになるのかな、というような「想像」もできますよね。

 

f:id:sona99:20181203184238p:plain

 

  「青春」が「指輪」になるなら「今ここにある青春」も「いつかは指輪になるのかな」と考えるのは自然な想像だと思います。

 

 また、上の図はあくまでもイメージで、例えばMOMENT RING』はひとつで、そこに新しい青春の思い出がどんどん追加されていくという考え方でも全く問題ないと思います。ここで重要なのは「今ここにある青春もMOMENT RINGの一部なんだ」という「視点の変化」なんです。

 

 『MOMENT RING』=「思い出」なのに、「思い出だけじゃない」という歌詞はどういうこと?曲のタイトルを否定してるの?と思った人もいるかもしれませんが、これはつまり「今走っている青春も『MOMENT RING』になる」 「そうやって増えていく『今までの思い出』と『これからの思い出』の全てが『MOMENT RING』なんだ」ということです。

 

 つまり『MOMENT RING』という歌には「過去を愛する歌」という側面もありますが、それ以上に「近い未来、愛すべき過去になる『今』を愛する歌」という側面のほうが強いんですね。歌詞の中の 「閉じ込める」「眺める」、そして「終わらない青春」という言葉がそれをはっきりと示しています。

 

 というか曲名が『MOMENT RING』ですからね。「今という『一瞬』を愛する歌」に決まってます。 

 

 この『MOMENT RING』を私たちファンに当てはめて言えば、こうやって増えていく『MOMENT RING』の中にμ’sAqoursと一緒に走ったMOMENT RING」もある、という感じでしょうか。

 

 あなたは今まで、μ’sAqoursからどんな『MOMENT RING』をもらいましたか?

 

 そしてこれから、どんな『MOMENT RING』をもらうことになるのでしょうか?

 

 

f:id:sona99:20181103161953p:plain

「ずっと一緒にいられますように」

f:id:sona99:20181104202932p:plain

「この空はつながってるよ」

 そしてなんとなくですが、冒頭に書いた3年生の「ずっと一緒」「この空はつながってる」というのはこの『MOMENT RING』と近いことを言っているのかな、という感じも少しだけします。

 

 「Aqoursの思い出」はもう指に付いてるから、「私たちはずっと一緒」なんだ。

 

 だから「それぞれの新しい青春」を走ろう。このつながってる空の下で、ずっと一緒に。

 

 この世に「永遠」は存在しませんが、『MOMENT RING』のように「思い出」を小さな箱に閉じ込めて忘れないようにしておけば、「限りなく永遠に近い何か」がずっと手元にあるような、そんな気がしますよね。

 

 「今」という「点」が「サンシャイン!!」では「線」になり、その「虹の先」には『MOMENT RING』のような「輪」が待っているのでしょうか?

 

f:id:sona99:20181202181052p:plain

 実は、Aqoursの楽曲の中でも『Thank you, FRIENDS!!』には「ループ」「永遠」という言葉も出てきますし、少し強引かもしれませんが『ハジマリロード』『Marine Border Parasol』の中にも「輪のようなもの」がうっすらと見えるような気もします。

 

 『ハジマリロード』は「西へ東へ走って日の出を追い越しちゃえ!」みたいな歌詞から「地球」がちょっとだけ見えますし、くるりとひとまわり」「リロード」という言葉もあります。

 

 『Marine Border』というのは歌詞にある「水平線」と掛かっていますが、素直に「ボーダー柄のパラソル」と捉えて上から見れば、そのボーダーは「輪の形」になります。

 

 そして何より、どちらも歌詞を見れば「ずっと終わらない」というような内容になっていますしね。

 

f:id:sona99:20181115170701p:plain

 

 他にもHAPPY PARTY TRAIN』のMVの一番さいごに、タイムラプスで撮られた星が「輪」のようになっていく描写もあります。「レールはどこまでつながってるか分からないけど、どこまでもずっと走って行きたいね」と言っているんですね。

 

 

  ここまでは楽曲の中の「輪」を見てきましたが、「サンシャイン!!」の物語の中にもいくつか「輪」が登場しています。

 

f:id:sona99:20181125162126p:plain

f:id:sona99:20181125162717p:plain

f:id:sona99:20181203225304p:plain

 

 「物語」の中では、「0という数字」「サンシャイン!! の円陣」想いよひとつになれ』の「シュシュ」の3つでしょうか。

 

 そしてこの中でも特に「シュシュ」は、『想いよひとつになれ』や『海に還るもの』の持つ意味を考えれば、Aqoursにとっての『MOMENT RINGと言っても良いかもしれません。

 

参考:『海に還るもの』

sona99.hatenablog.com

 

 

 以上、MOMENT RING』の「永遠を『輪』として捉える考え方」についてでした。

 

 

 

6.「自然」のモチーフ

 

 6つめ、これで「抑えておきたいポイント」は最後です。

 

 この作品には多くの「自然」に関係するモチーフが登場しますが、結構数が多いので全部入るような図を作りました。なんとなくで良いのでどんなモチーフがあってどんな意味があったかを軽く整理しておきましょう。

 

f:id:sona99:20181203152933p:plain

 

 この中からいくつかをピックアップして、簡単に説明します。

 

 「海」は、はじめはネガティブなモチーフでしたが、1期2話で梨子が「海」の中で「輝き」を見つけてからはポジティブなものになっていきます。そもそもグループ名が「Aqours」ですしね。

 

 「雨」「困難の象徴」です。が、「海」と同様にAquorsの物語は一味違います。2期2話「雨の音」、2期3話「虹」ではタイトル通り「雨」が「不可欠なもの」という扱いになっていて、つまりAqoursの物語では「困難は不可欠」だということです。

 

 「紙飛行機」が何なのかははっきりとは語られていませんが、「飛行機を模したもの」なので「飛ぼうとする意志」のようなものだと思います。2期1話、2期13話では「太陽」と共に対比されているので、「太陽を追いかける意思」という感じかもしれません。

 

 「虹」Aqoursの軌跡」を表しているのと同時に、「奇跡」の正体を教えてくれるモチーフです。本ブログの記事を再掲しておきます。

sona99.hatenablog.com

 

 「太陽」はとても広い意味を持つモチーフで、言葉にすれば「追い求める対象」みたいな感じでしょうか。「夢」とか「輝き」とか、そういうもの全てが含まれているので、「とてもたくさんの意味が入っているモチーフ」です。

 

 「太陽のひとつの解釈」については本ブログでも取り上げています。

sona99.hatenablog.com

 

 「星」は、「太陽」とかなり近いです。2期10話「シャイニーを探して」では「追い求める対象」でしたが、ラストカットでそれはAqoursのメンバーを表していました。

 

 

 かなり簡潔に書きましたが、モチーフの解釈としてはこんな感じだと思います。劇場版でこれらのモチーフが再び出てくるのか、新しいモチーフが登場するのかは分かりませんが、なんとなく全体をおさえておくと良いかもしれません。

 

 

 


 

まとめ

 最後に「6つのポイント」を簡単にまとめておきます。復習用にどうぞ。

 

① 「終わりにする」か「続ける」か

 f:id:sona99:20181205141521p:plain

 3つのグループの進退と、ルビィと理亞の成長がポイントでした。Aqoursは一体どんな「答え」を選ぶのでしょうか?

 

 

②「純粋な気持ち」と「輝き」

 f:id:sona99:20181204160208p:plain

 「The School Idol Movie」の大きなテーマである「純粋な気持ち」と、「サンシャイン!!」の「輝き」という言葉の関係性がポイントでした。

 

 

③「子供」と「未熟DREAMER

 

f:id:sona99:20181203182238p:plain

 「子供」は「純粋さの象徴」その「子供」と松浦果南というキャラクターの関係性がポイントでした。

 

 

④「SKY JOURNEY」

 

f:id:sona99:20181218155502p:plain

 『HAPPY PARTY TRAIN』と『SKY JOURNEY』は「Aqoursとファンの関係を歌った曲」であり、それは劇場版と近い位置にある、ということがポイントでした。

 

 

⑤「今」と「永遠」

 f:id:sona99:20181113115354p:plain

 『MOMENT RING』で歌われているような「永遠の輪」の考え方、そして3年生の「ずっと一緒にいられますように」という願い事がポイントでした。

 

 

⑥「自然」のモチーフ

 

f:id:sona99:20181203152933p:plain

 「自然界のモチーフ」にもそれぞれ意味があること、それでもAqoursにとって「海」は特別なモチーフであることがポイントでした。

 

 


 

 

 『劇場版ラブライブ!サンシャイン!!』公開まであと少し、直前には紅白歌合戦もあります。

 

 年末年始にAqoursが私たちにくれる『MOMENT RING』を、何年か後に「あのときは本当に楽しかった」と心から思えるような「思い出」を作れるように、一緒に全力で楽しんでいきましょう。